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大阪家庭裁判所堺支部 昭和56年(少)14229号 決定 1981年8月25日

少年 K・R(昭三九・七・九生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は

一  A、B及びCと共謀のうえ、昭和五六年六月一二日午後三時四五分ころ、河内長野市○町○××番地先路上に駐車中の普通乗用自動車内において興奮幻覚又は麻酔の作用を有する劇物で政令に定められたトルエンを含有するシンナーをビニール袋に入れてみだりに吸入し

二  公安委員会の運転免許を受けないで、昭和五六年七月一四日午後四時ころ、堺市○○×丁×番付近道路において自動二輪車を運転し

たものである。

なお、本件で併合して審理した大阪保護観察所長からのぐ犯通告事件については、その理由として記載されている事実はそのとおり認定できるところであるが、前記非行事実はすべて本件ぐ犯通告の理由に記載されているもので、ぐ犯事由の一部と前記非行事実とはいわば同一の関係にあるものであり、またその同一関係にあるもの以外の保護者の正当な監督に服しない状態にあるため犯罪を起すおそれがあるということについては前記二個の非行事実よりも広がりをもつたものでシンナーの吸引や車輛の無免許運転以外の犯罪行為にも発展して行く危険性を含んだ状態ではあるが、ともあれ前記二つの非行事実は通告事件におけるぐ犯性の結果引き起こされた犯罪であるといえるので、前記保護者の正当な監督に服しないというぐ犯事由は本件処遇についての参考として考慮するにとどめるを相当と考えここにとりたてて非行事実として認定しないこととする。

(適用法条)

毒物及び劇物取締法違反の事実につき同法三条の三、二四条の四、同法施行令三二条の二、刑法六〇条。道路交通法違反の事実につき同法六四条、一一八条一項一号。

(送致理由)

少年は、当庁において、昭和五四年八月三日窃盗罪(シンナー吸引や怠学を重ねるなかで単車等五回窃取)により不処分の決定を受け、さらに昭和五五年八月一九日恐喝罪により身柄収容の上保護観察処分となつたがその後も定職につかず一時家業の手伝いをした時期もあつたものの保護者の言うこともきかず毎日のようにパチンコ店に出入りし、シンナー吸引や無免許運転をくりかえし、家の金を持出しては外泊や家出をするという始末であつた。また保護観察所においても再三にわたつて少年に出頭させて注意し、指導を続けてきたが全く改善がみられないので遂に収容による矯正教育を求めて本件ぐ犯通告となつたものである。

そこで以上のような事情、当庁家庭裁判所調査官○○○○の調査結果及び大阪少年鑑別所の鑑別結果を併せ考えるに、少年を社会生活の内での指導監督により更生させることは不可能であると考えられるので、施設に収容し社会人としての基本的な躾や情操を養い、習慣的になりつつある徒遊的な生活態度を払拭させる必要があると認められるので少年を中等少年院に収容して教育指導するのが相当である。

よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 川崎英治)

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